A.P. Indy Pensioned
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オーナーの鶴巻智徳氏は、日本でもエーピージェットなどを所有し、米国同様「エーピー」の冠名で知られ、デルマークラブ名義の「リンド」の冠号(一番有名なのはリンドシェーバー)でも多くの馬を走らせていた。「A.P.」は自身が社長を務めていたオートポリスというレーシングサーキット(大分県日田市、2005年に川崎重工が買収)の略称。おそらく「Indy」もインディーズレースに由来しているのではないかと思われる。
鶴巻氏は、日本人として初めてアメリカ三冠レースの優勝オーナーとして歴史にその名を刻んだ。しかし、皮肉なことにこの馬が米国競馬で最高の栄誉を享受していた1992年、オーナーの経営する「日本オートポリス」はバブル崩壊で倒産してしまう。以降、鶴巻氏は第一線から退き、エーピーインディは現役引退後、共有オーナーでもあったビル・ファリッシュのレーンズエンドで1993年から今シーズンまで供用されていた。ちなみに、全盛時には30万ドルもの種付け料を誇った。
個人的には、この馬については特に思い入れはないのだが、4年半前、2006年の11月にレーンズエンドで見学させてもらったことがある。このとき17歳。すでに晩年のため、背ったれ気味ではあったが、毛艶もよく表情は引き締まっていた。
今年は25頭ほどに種付けしたものの1頭も受胎しなかったため、受精能力の喪失と判断されたという。しかし、衰退気味だったボールドルーラー系を支え、多くの有力後継種牡馬を送った功績は大きい。エーピーインディは、米国のみならず世界の馬産に貢献した偉大な一頭といっていいだろう。今後は功労馬としておだやかな余生を送って欲しい。