Sakura Saku Plus
|
福井県の九頭竜川や東北地方の河川など、本流で狙うサクラマスは極めて敷居が高く、例えば2年間通ってアタリ1回、はたまた5年目で初物などというケースが当たり前の世界。根気強さとともに運の強さが要求されるシビアなゲームとして名高い。北海道におけるサクラマス釣りは河川内が全面的に禁止されており、主に3月から5月にかけてサーフや磯あるいは漁港など、海から狙うサクラマスが近年の大ブームとなっている。
北海道の釣り専門誌『North Angler’s(ノースアングラー)』などで得た知識ではあるが、大雑把にいうと、サクラマスは当初、島牧の海アメマスの外道として釣られていたのだという。しかし、5年ほど前に熊石地区などの魚影が非常に濃いことが分かり、実際に爆発的に釣れ出したことでそのブームに火がついたようだ。つまり、北海道の海サクラマスの歴史は非常に浅いということ。それだけに、まだまだ発展途上かつ大きな可能性を秘めている魅力のターゲットといえよう。島牧の道の駅には村越正海氏の釣ったサクラマス(64cm、4キロ)の写真があった。
海サクラマス用ルアーの最近のトレンドとなっているのが、細身のジグミノーである。もちろん、ミノープラグやスプーンでもヒットするが、遠投が可能でただ巻きでよく釣れるということで、多くのアングラーが1オンス前後のものを愛用している。釣り場ではかわせみの中村さんからこうアドバイスを受けた。「普通の釣りは手前から攻めるのが基本だけど、サクラマスに関してはとにかく遠投。遠くから手前に探ってください」と。また、「サクラマスは濁りが入っている状況よりも潮が澄んでいるほうが良い」と中村さんは言う。2月に訪れた札幌のプロショップ「マイロッホ」の店員さんからは「サクラマスは捕食が下手だと思います。だから、余計なトゥイッチを入れるよりもただ巻きのほうが有効」という話も聞いていた。確かに今回初めて魚を見て感じたのは、体に比較して目が小さいということ。グラマーな胴体に比較して小さい頭、そして小さな目。魚の形状からもそうした仮説は十分に成り立つのではないだろうか。
こちらの写真は2日目に訪れた養殖場で見せてもらったサケの稚魚。サケ・マス類の幼少時の象徴であるパーマークが鮮やかだ。4月の半ばから何度かに分けて放流されるこれらの稚魚はサクラマスのベイトフィッシュとなる。やがて海へと流される稚魚を狙って、サクラマスは河口や流れ込み付近を回遊してくるのだ(5月1日前後の時期になると河口周辺に規制が入り、海でも禁猟区ができるので注意)。
これはあくまでも個人的な印象ということはお断りしておくが、ゲーム・フィッシュとしての海サクラマスの引き味は、実は思ったほどエキサイティングではなかった。重量感こそあるものの、手前に寄せるのは意外なほど簡単だし、シングルフックのためかバラシも全くなかった。ただ、これは経験値があまりにも少ないのでもちろん断定はできない。実のところ、川で釣れるサクラマスの引きはパワフルでもの凄いという話を聞いたことがあるし、海の場合は回遊の長旅疲れ(?)や河川への遡上態勢ということで無駄な体力を使わないということなのかもしれない。
※後日、北海道のような寒冷地では一部のオスも降海することが分かった(追記)。
北海道の風の冷たさは備忘録としてもぜひ記しておかねばなるまい。初日に改めて体感したその寒さは、やはり別格だということ。今年は暖冬だったというが、指なし手袋での失敗を気の毒に思ってくれたのか、2日目の朝、中村さんは特製のゴム手袋を用意してくれた。これは自衛隊の知人に購入してもらったとかで、隊員が射撃訓練などで使用するものだという。一見、佐清(すけきよ)チックながら、指にピタッとフィットして、毛糸の手袋との組み合わせはバッチリだった。
2度目の挑戦で思いも寄らぬ釣果に恵まれた今回の海サクラ。天候をはじめとする自然条件にかなり左右される釣りではあるが、忍耐力のあるアングラーには自信を持ってお奨めしたいターゲットといえる。数が釣れる魚ではないから、とりわけ冬場の坊主釣行に慣れているシーバスマンには向いているかもしれない。
美しく輝く銀鱗の女王と再び対峙できるその日が楽しみだ。
Special thanks to Hokkaido Fishing Guide Kawasemi and friends in local.
Of course, thanks to spring Sakuramasu/Cherry Salmon as well as versatile Japan Sea.