2010 J-EAST Best Rookies
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一時JRAの騎手を目指していた原選手は高校のアマ4冠王。対する安慶名選手も同じくアマで30勝のキャリアがあるだけに、両者の基本レベルは折り紙付き。ともに今回初めて見る選手だったが、試合開始のゴングがなるや、いきなり両者一歩も譲らない緊迫した展開に。原選手は飛び込みざまの左フック、コンビネーションともに冴え渡り、2Rには安慶名から左フックでダウンを奪った。このまま勢いに乗った原が断然有利か、と思いきや、ラウンド終盤には今度は安慶名の右で原がダウン! しかも、攻めていた原にとってはカウンターになり、完全に足にきていた。大ピンチである。それでも、なんとか立ち上がって安慶名の猛攻を凌いだ原。続く3Rは両者の一進一退の打ち合い。そして最終R。原の強烈な左ボディが決まりだすと、安慶名の足が完全に止まった。原は左の鬼フックを非情なまでにボディに浴びせ続けて完全にリード。判定は3-0で、原隆二に軍配が上がった。
2週間前の拙ブログには「初っ端からハイレベルの攻防が見られそう」と書いていたのだが、実際の試合は予想をはるかに超える内容の濃さだった。最軽量のミニマムというと、軽視しがちな階級ではあるが、迫力はむしろ中・重量級以上。何よりも両者の気迫が観客にストレートに伝わった一戦で、本当に見応えがあった。原選手はこれで4戦4勝(2KO)。この日は技能賞を受賞し、次は全日本でプロ2冠を目指す。
原選手はJRA競馬学校入学時にはしばしばメディアで取り上げられていた。丸坊主のブレザー姿だった当時、紹介写真の顔つきはキリリとしていた半面、どこか表情に暗さがあった。この日颯爽とリングに上がった原選手は、実にいい顔をしていた。それは本当の自分がいる舞台が四角いリングであることを確信しているからだろう。
一見ふてぶてしく映る風貌とは対照的に、堀選手の試合運びはなかなかクレバー。序盤は劣勢だったが、ダウンも効いていなかったのだろう。確実に巻き返せると踏んでいたのか、あせるそぶりは一度も見せなかった。後半は的確にパンチを当て、平の追撃を凌いだ技術は確かなもの。特にフットワーク、フリッカーの右ジャブなどは素晴らしいと思った。ここ2戦を見る限り、試合内容は低調だが、まだ伸びしろがあるはず。自分の好みに合った選手だけに次も密かに注目してみたい。
第4試合のスーパーフライ級は、佐藤宗史(石神井スポーツ)が清水大樹(横浜光)を手数で圧倒。3-0の判定勝ちを収めた。
戦前の記者会見で一躍注目を集めていたのが、この佐藤選手である。かつてホリプロで和田アキ子の元サブマネージャーを務めていたという異色の経歴はスポーツ各紙でも報道されていた。そして、この日の会場にはホリプロやレコード会社の社員で構成された私設応援団と称する方々が大はしゃぎ。一言いいでしょうか? 「ホリプロ、やめてんだよね」。ニュースとして話題を提供することは決して悪いことではないけれど、試合内容のしょぼさもあってか、コアなファンからは、とっても寒い視線を浴びていたことは指摘しておきたい。
写真を撮らなかった試合では、S・バンタム級のコーチ義人VS大橋健典(ともに角海老宝石)戦と、フェザー級の関豪介(角海老宝石)VS小野田昌史(ワタナベ)戦が印象に残った。同門対決となった前者はコーチが大橋から2度のダウンを奪って、1R2分56秒の豪快なKO勝ち。特に最初のダウンはロープ外に相手の体が飛ばされるほどだった。コーチ義人選手は敢闘賞を獲得した。
フェザー級の試合は、いわゆる泥仕合系の消耗戦。2-0の判定でサウスポーの関選手が打撃戦を制した。勝者はこれで5戦全勝ながらKO勝ちはゼロ。レベルそのものはまさに4回戦ではあったが、愚直なまでに連打を繰り出す関選手の姿には、なぜか感動を覚えた。関選手はザブングルの変な顔の方に似ている。
注目のライト級は土屋修平選手(角海老宝石)が大方の予想どおり、中澤将信選手(帝拳)に2R1分23秒でKO勝ち。見事にMVPを獲得した。ここまで7戦して7勝。7つのKO勝ちはすべて2R以内で仕留めてのもの。今回の試合はあえて野球でたとえれば、大学生相手にリトルリーグの小学生が挑んだ感じ。レベルがあまりにも違いすぎた。
■2010年11月3日(日)、東日本新人王トーナメント決勝戦の全試合結果は次のとおり。
○原隆二(大橋) VS ●安慶名健(横浜光) 3-0
○山口隼人(湘南RYUJU) VS ●多打魔鎖獅(TI山形) 2-0
×堀陽太(横浜光) VS ×平龍太郎(石神井) 1-1ドロー※堀の勝者扱い
○佐藤宗史(石神井) VS ●清水大樹(横浜光) 3-0
○堤英治(ワンツースポーツ) VS ●高橋康弘(ドリーム) 5R29秒TKO
○コーチ義人(角海老宝石) VS ●大橋健典(角海老宝石) 1R2分56秒TKO
○関豪介(角海老宝石) VS ●小野田昌史(ワタナベ) 2-0
○荒井翔 (ワタナベ) VS ●高畑里望(ドリーム) 3-0
○土屋修平(角海老宝石) VS ●中澤将信(帝拳) 2R1分23秒KO
○山田智也(協栄) VS ●高橋光政(角海老宝石) 3-0
○林欽貴(E&Jカシアス) VS ●輪島大千(輪島功一スポーツ) 1R1分5秒KO
以上がミニマムからウェルター級までの全11試合。なお、ミドル級は、岩崎和雄(ロッキー)が不戦勝(対戦相手棄権のため)で新人王となった。