Oceans
|
以前に観た同様のドキュメンタリー「Deep Blue」では、アザラシの子供がシャチに襲われるシーンが今も印象に残っている。獲物をもてあそんでいるのか、狩に成功した喜びを表しているのか定かではないが、シャチが空高くアザラシを投げる場面である。今回の「Oceans」でもやはりシャチがアザラシを食べる映像があったが、実はこれ自然界の弱肉強食のバランスを伝えるという意味でもそう残酷な話ではない。ただ、何より暗澹たる気持ちにさせられたのは、漁で捕らえられたサメが胸ビレ、背ビレ、尾ビレだけをもがれ(つまり、泳ぐことができない)、生きたまま海中に戻されるシーン。しかも、海の底でなすすべもなく、ただエラ呼吸するのみのサメの映像を見せられては…。
正直、こうした魚たちの悲しいシーンを突きつけられると、何かアングラーとしての存在価値をも否定されている気分になってくる。漁と釣りは別物ではあるが、一般の方からはほとんど同じ目線で見られている節はある。ゲームフィッシングと称して、キャッチ&リリースやバーブレスフックを推奨したところで、それは所詮きれいごと。多かれ少なかれ魚を傷つけていることに変わりはないわけだし、もしも釣りを楽しむのなら、実はキャッチ&イートこそが本来あるべき姿ではないのか? 自分にとってはジレンマともいえる問題。考えすぎかもしれないが、ちょっとそんなことも思った。
話が脱線したが、「Oceans」。製作側の意図するメッセージが特に目新しいわけでもなく、やや空回り感は禁じえなかった。確かに撮影技術、映像、何より海の生き物たちは皆素晴らしい。空から鳥たちがいわしの群れを目がけて急降下するシーンなど、目を見張るシーンもあったが、全体的には残念ながら期待はずれだったといえよう。次は痛快アクションものかオバカ映画にしよう。